整形外科
整形外科は運動器の病気を扱う診療科です。運動器とは骨や筋肉、関節の他、脊髄や神経などが連携し、体を動かす仕組みのことです。これらのどこか一つでも障害されると上手く歩けなくなってしまいます。
筋骨格系の疾患としては骨折や靱帯の損傷、関節の脱臼などがあり、神経系では椎間板ヘルニアを含む脊髄を圧迫する病気がよく見られます。
また運動器に障害があると思われる病気の中には、腫瘍やホルモンの異常、免疫介在性疾患等が原因となっていることもあるので、正確な診断が必要になります。
当院では整形外科に力を入れ、動物たちが一生を通して元気に活動できることを目標に治療にあたっています。
前十字靱帯断裂
前十字靭帯は、膝の関節内に存在し、大腿骨に対し脛骨が前方に変移しないように制限したり、過伸展を防ぐ働きがあります。犬では人に比べて近位脛骨の関節面の傾きが大きいので、前十字靭帯に負担がかかりやすく、断裂を起こす可能性が高くなります。 手術方法は、従来の関節包外法と近位脛骨骨切り術があります。当院では、近位脛骨骨切り術を行う場合TPLOを行っています。
TPLOは脛骨の近位を半円状に骨切り・回転し、脛骨の機能軸に対し約6度になるように固定します。 従来の手術方法に比べ、安静期間が短くて済み、早期に運動が可能になります。


椎間板ヘルニア
背骨と背骨の間のクッションになっている椎間板が突出して、背骨の中を通っている神経(脊髄)を圧迫したり傷つける病気です。首に痛みが出たり、ふらふらとしか歩けなくなったり、自分で立てなくなることもあります。症状が軽い時は薬と安静療法で、症状が重い時(起立不能や自力で排尿が出来ないとき等)は手術をして脊髄を圧迫しているところを取り除きます。



頚部椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは胸・腰部で起こることが多いのですが、首にも起こります。
脊髄の損傷度が軽い場合は首の痛みだけの場合もありますし、重度の場合は四肢麻痺を起こすこともあります。
手術方法は胸腰部では、脊椎の横にある関節突起とよばれる部分を除去して脊髄にアプローチします。
首の椎間板ヘルニアでは、脊椎の腹側に小さな穴をつくって、そこからヘルニア物質を除去をするベントラルスロットという方法を主に行っています。
四肢麻痺の犬に頚部脊髄造影を行ったX線写真。
第5~6頚椎の間で腹側から脊髄が圧迫されています。(赤矢印)
ベントラルスロットを行った犬の頚椎腹背像。
術後1ヶ月後のX線写真ですが、第5~6頚椎間に開けた穴が確認できます。(赤矢印)


股関節脱臼
仙腸関節脱臼
足根中足関節の亜脱臼
膝蓋骨脱臼
ひざのおさら(膝蓋骨:しつがいこつ)が正常な位置からはずれてしまう病気です。
一般的には小型犬に多く見られ、内側に脱臼することが多いようです。脱臼するとひざをかばってよちよち歩きや足先が体の内側を向いてO脚のように見えることもあります。
赤い丸がひざのおさらです。
手術後はおさらが元の太ももの骨にもどり足もまっすぐになります。
びっこをひかない小型犬の膝蓋骨脱臼でも、膝の関節面に傷がついていることがあります。(写真左)
Block Recession(ひざの溝を深くする手術)を行った術中写真。(写真右)


長趾伸筋腱の脱臼
膝の複合靭帯損傷
このワンちゃんは、両側の膝(ひざ)の前十字靭帯断裂をおこしたあとさらに転倒し、外側側副靭帯の損傷をおこしました。
膝の関節が非常に不安定になり、起立不能になりました。
手術はスクリューとワイヤーを使って、膝関節を安定化させました。



骨折
成長線の早期閉鎖
こどもから大人になるとき成長線という骨の”はし”の部分が伸びることで骨は長く大きくなっていきます。この成長線が傷ついたりして成長が一部または全部止まってしまうと、骨が曲がったり、短くなったりします。
前腕の2本の骨のうち下の骨(尺骨)の緑色の丸をつけた部分の成長が止まってしまったことで尺骨の成長が止まるが、もう一本の骨(橈骨)の成長はそのまま続くので橈骨の変形と肘の関節面(赤丸)の不適合が起こります。成長が止まってしまった尺骨の骨を切ることで関節面の不整をおさえます。

【尺骨成長板の早期閉鎖による前腕骨変形】
尺骨の成長板の早期閉鎖により、橈骨・尺骨の外反変形が起こることもあります。 足先が正常な方向を向くように矯正骨切りを行い、肘関節と手根関節の位置関係を正常に戻します。 このワンちゃんは、人の顎の骨折に使われるMatrix Mandibleというプレートを使って、Open Wedgeで固定しました。



脛骨異形成症
ミニチュア・ダックスフントに見られる脛骨(すねの骨)が成長に伴って内側に変形する病気です。脛骨の足先に近いほうの成長線の一部の成長が早期に止まってしまうため起こると考えられています。
手術は脛骨を切ってひざの関節と足首の関節の関係が正しくなるように固定します。


股関節形成不全
以前はこの病気は大型犬に多いと認識されていましたが、最近では小型犬でも散見されます。
原因は明確ではありませんが、遺伝的な素因によると言われています。
また、体重の増加や発育期の栄養のアンバランス、特にカルシウムの過剰摂取が股関節形成不全を助長すると考えられています。
股関節の寛骨臼の発育不全・変形、大腿骨頭の変形や骨頸部の骨棘の形成、関節包に緩みが生じ、股関節の亜脱臼・脱臼を起こします。
そのため歩行時にふらつきが出たり、痛みによって大腿部の筋肉量の低下が認められることもあります。
現在、股関節形成不全に対する外科的な治療は、股関節全置換術(THR)と大腿骨頭切除術(FHO)になります。
大腿骨頭切除術は、比較的体重の軽い場合に適応されることが多いようです。
この手術は大腿骨頭と骨頸部を切除し、寛骨臼に接触する痛みを取り除きます。


大腿骨の骨頭壊死
整形外科
整形外科
整形外科は運動器の病気を扱う診療科です。運動器とは骨や筋肉、関節の他、脊髄や神経などが連携し、体を動かす仕組みのことです。これらのどこか一つでも障害されると上手く歩けなくなってしまいます。
筋骨格系の疾患としては骨折や靱帯の損傷、関節の脱臼などがあり、神経系では椎間板ヘルニアを含む脊髄を圧迫する病気がよく見られます。
また運動器に障害があると思われる病気の中には、腫瘍やホルモンの異常、免疫介在性疾患等が原因となっていることもあるので、正確な診断が必要になります。
当院では整形外科に力を入れ、動物たちが一生を通して元気に活動できることを目標に治療にあたっています。
前十字靱帯断裂
交通事故による骨折は少なくなりましたが、階段から落ちたり、飼
骨折の治療において解剖学的に整復することを心がけています。正
整復不能な粉砕骨折や矯正骨切りが必要となる変形した骨の場合は