ひなちゃん ポメラニアン: 前十字靭帯断裂
ひなちゃんは10歳のポメラニアンの女の子です。左の後肢を急にかばって歩くようになりました。検査をしてみると前十字靭帯が断裂していることがわかりました。前十字靭帯は膝の安定性に関わる靭帯で、この靭帯を損傷すると大腿骨と脛骨の位置関係がずれてしまい、正常に歩行することが難しくなります。更に半月板を損傷することもあります。長期間のケージレストで膝の状態が安定することもありますが、多くの場合、関節炎が進行し、足をかばって歩く原因になります。
ヒトの前十字靭帯損傷のように、靭帯自体を再建することは動物では難しく、前十字靭帯の走行に類似した位置に人工の糸を入れて膝関節を安定化させる方法もあります。この方法は脛骨の近位の関節面の角度により、術後の成績が一定ではありません。
そのため当院では脛骨の関節面の角度に関わらず、安定した成績が得られる脛骨高平部水平化骨切り術(TPLO)をほとんどの前十字靭帯断裂で行っています。この手術は脛骨近位を半円状ののこぎりで切った後、関節面の角度を0~5°になるように骨片を移動し、特殊なプレートで固定します。この手術を行うことで前十字靭帯が断裂しても、大腿骨と脛骨の位置関係が改善し、早期に歩様が改善されます。
ひなちゃんもこの手術を行い、10歳ですが、43日の検査で骨切りした部位の骨癒合が認められました。歩様も早期に改善しました。