Leaちゃん:ミニチュア・ピンシャー 有機リン中毒
有機リン剤は、神経毒性を持つ有機リン化合物を用いた農薬として薬品化されています。現在では比較的低毒性のものが農薬として販売されていますが、小型犬が濃縮した状態で接種すれば重篤な中毒症状を起こすことがあります。
症状は程度により差がありますが、縮瞳、歩行困難、意識混濁、ひどくなれば痙攣や肺水腫を呈して死亡することもあります。診断は血液中のコリンエステラーゼという神経伝達物質の活性値を測定します。有機リン中毒を起こしている場合はこのコリンエステラーゼの値が著しく低くなります。
ただ臨床の現場では緊急処置が必要となるため、検査結果を待たずに治療に入ることがほとんどです。というのはコリンエステラーゼは院内測定ができず、外部の検査機関に依頼する必要があるからです。そのため患者の履歴や臨床症状からこの中毒が想定された場合、病態に即して適切な処置をすることが大切です。
中毒物質を摂取してからの時間が短ければ、催吐や胃洗浄を試みます。残念ながらほとんどの場合、中毒物質を摂取したことに気がつかないため、神経症状が出てからの来院となります。そのため、治療は拮抗薬や解毒剤を投与することが主となります。
今回のLeaちゃんのケースでは、瞳孔がピンホール状態になり、瞬膜の突出、運動失調、震えが認められました。すぐに拮抗薬であるアトロピンや下解毒薬であるPAMを投与しました。
中毒症状がひどかったため、急性の症状は3日間ほどで消退しましたが、瞳孔のサイズが正常化するのには3週間かかりました。現在は後遺症もなく元気に過ごせるようになりました。